第18回:かかりつけ医に大切な「目的コミュニケーション」とは?

コミュニケーション【2018年の改定で鮮明になった、かかりつけ医制度】
2018年の改定で、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師のあり方が鮮明になった。特に調剤薬局は、これまでの薬を作るという仕事をコンピューターやロボットに移管して、いかに薬を適切に飲むかという業務がメインと位置づけられた改定だった。

一方で、診療所は初診料に機能強化加算が新設されたように、かかりつけ医を定義して高く評価するという方針となった。
 
 
それでは、かかりつけ医とは何だろうか?
 
 
【かかりつけ医の鍵は「指名」と「常連化」】
患者像は慢性疾患(糖尿病・高血圧症・脂質異常症・認知症・喘息など)。こういった患者さんは定期的な受診と定期的な薬物療法、生活環境の改善が必要となる。それをトータルでサポートする医師をかかりつけ医と呼ぶ。この患者さんへの対応の鍵は「指名」と「常連化」である。

かかりつけ医として指名されて、信頼されて、「あなたに任せます」となれば、先生に会いたくてリピート化する。何か問題があれば、適切な紹介をし、他院のお薬や治療内容を把握してくれてなんでも相談できる、そんな昔の赤ひげ先生のようなドクターをイメージしているのではないだろうか?
 
 

【適切なフィードバックがないと、治療拒否につながる】
さて、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師にとっての2つの大切な技能は「傾聴」と「適切なフィードバック」だと考える。傾聴とは、患者さんの訴えを様々な可能性を吟味しながら、継続的に聞き続ける力、発見能力(気づき)と言い換えてもいいかもしれない。

適切なフィードバックとは、患者さんが行動変容をおこすために行われる作業である。このフィードバックが適切ではないと、お薬は飲まないし生活も変えない。治療に患者さんが参加しない。つまり、フィードバックとは、患者さんを医療チームに参加させる作業といえよう。

 
 
【リスクコミュニケーションだけではダメ。目的コミュニケーションの大切さ】
患者さんを治療に参加させるためには、リスクの説明、治療後の希望を十分理解していただく必要がある。例えば、高血圧であれば、高血圧が原因で引き起こされる心筋梗塞や脳梗塞、そのほかの合併症のリスクを十分に説明する必要がある。この部分をどのような資料を使い、どのようなケースを話し、患者さんが本当にリスクを感じていただけるようなコミュニケーションスキルが大切なのだ。

一方で、リスクコミュニケーションだけではなくて、目的コミュニケーションも大切だ。目的コミュニケーションとは、治療の結果、手に入れる未来がどれだけ素晴らしいかを説明する、目的に対するアプローチだ。医療業界では、どちらかといえば、リスクコミュニケーションのみリスク回避のために重視される傾向が強く、目的コミュニケーションが疎かになりがちである。しかし、目的コミュニケーションにより、患者さんをポジティブに動機づけできれば患者さんはより治療に積極的に参加するようになるため、目的コミュニケーションもリスクコミュニケーションと同じくらい重要なのである。
 
アメリカでは、太っている人、病気がちな人は仕事ができないというリスクから重要な仕事が回ってこない。自己管理が出来ない人に、重要な仕事は任せられないという発想からきている。欧米化が進んだ日本において、今後この傾向は強まっていくことだろう。痩せるという作業、病気を克服するという作業、いずれも決まった期限内に最善のアプローチによって、目的を達成するというプロジェクトマネジメントに過ぎない。つまり、患者さんをよくするという目的に対して薬物療法と生活改善、行動変容を組み合わせて行うための重要なポイントは、コミュニケーションである。